SCP-539-JP - 星をまもるひと【解説】
<読んでSCPをすこれ!>
— 総たいしょー (@thor_taisho) 2019年6月2日
SCP-539-JP:星をまもるひと
許さんぞデルポルト(偉人へのとばっちり)
会話ログがやわらかい文体でほっこりしました。さらっと明言された上司もいずれ収容対象になりそうですね。
チグリス座、ヨルダン座、マエナルス山座等、落ちたら洒落にならないのも多々。あとフリーザとか。
基本データ
- オブジェクトクラス: Euclid
- 著者: 0v0_0v0
- 作成日: 2019年5月29日
- 画像: なし
- リンク: SCP-539-JP - SCP財団
三行で説明!
- 様々な異常物品が集められている一軒家
- 温厚で協力的な初老の男性が一人で住んでおり、「星を守る」仕事をしている
- 忘れられた星座の結晶が降ってくるため、男性はこれを拾って保護している
記事の解説
ファンシーで優しい雰囲気の記事です。安心して読めますよ。
特別収容プロトコル
SCP-539-JP周辺は土地ごと財団フロント企業が買収しています。
月に1回インタビューと点検が行われますが、この場所に直接出向くのはクリアランスレベル2以上の職員でなければなりません。
いたってシンプルですね。
説明
SCP-539-JPは岡山県のとある町にある1軒の家屋です。
いきなり超蛇足なのですが…岡山県の天体観測名所といえば、井原市の美星町が挙げられます。文字数も合うので、おそらくここがモデルなんじゃないでしょうか。
閑話休題。
SCP-539-JP内部の空間は歪んでいて、外から見たよりもずっと広く、2桁㎢の超大豪邸になっています。
といっても、SCP-539-JPにはダイニングフロアと収容室フロアの2部屋しか存在しないようですので、この広大な敷地のほとんどは収容室として使われているらしいことが推測されます。
ダイニングには温厚な性格の初老の男性(SCP-539-JP-A)が一人で暮らしています。
収容室には淡い青色に光る異常物品(SCP-539-JP-B)が多数保管されています。これらの種類は下記のように、生物から無機物まで様々です。
- 常に5㎝浮遊し、鳴くと空のプレゼント箱が出現するトナカイ*1
- 抜け落ちた羽根が、フクロウの頭部に似た形のホオズキの実になるフクロウ*2
- 口から吹く泡がビー玉になる全長わずか5㎝のカニ
- 光源の向きに関係なく、現在の時刻を影で指し示す日時計
- 花弁の中心から常に「きらきら星」が流れるユリの花
- いつでも温かく、冷めない餃子
異常物品を収容、っていうからどんな危ないものかと思えばこのファンシーさよ。
どのようにして-Bが生まれるのかというと、SCP-539-JPでは不定期に空から青く輝く火球(SCP-539-JP-C)が降ってきます。-Cは1000℃以上の熱を持っていますが、-Aだけはこれに問題なく触れることができ、-Aが触れると数分で-Cは-Bに変形します。さながら魔法のような光景ですね。
インタビュー記録539-JP-A
-Aのお人好しな性格がよく表れているので、本文を読んでみてください。
担当者の国都博士も、疑うことを知らないいい人なのがわかります。
概略は以下の通り。
- -Aは数百年生きている(人間ではない)
- -Aは星守(ほしもり)であり、落ちてきた星たち(=-Cのこと)を保護している
- -Aは「上司」の命令で星守をやっている
- この日、国都博士は-Aに振舞われてピザを食べた
収容対象から渡されたもんを勤務中にホイホイ食うなや。
とは思うものの、相手が優しい人なので気を許しちゃうんでしょうね。実際危害は何ら加えられていませんし。
インタビュー記録539-JP-B
ピザが美味しかったのか、国都博士は2度目のインタビューを試みました。今度の話題は-Bについてです。
- 現在ある88個の星座は、1928年に定められたものである
- その時に"認定"されず零れた星座たちは、-CとなってSCP-539-JPに降ってくる
- -Aは、忘れられて落ちてきた星座たちを-Bの形に戻し、守るのを使命としている
- 「ジェイミソンさんの子たちやトレミーさんの子」は全数保護し終わったとのこと
- 星座は今も世界中の人の想像によって作られ続けており、それらももれなく-Cとなって落ちてくるため、-Aの仕事はこれからもなくならない
- -Bは別に食べてもよい
といった具合に、終始ほっこりした気持ちで読了できるお話でした。
背景知識
史実について
1919年、天文学者らによる国際組織である国際天文学連合(IAU)が結成されました。
1922年、IAUの第1回総会がローマで開催された際、全天の星座は88個であると定められるとともに、それらの各名称が承認されました。
その際、ベルギーの天文学者ウジェーヌ・デルポルト、カスティールズらが北天の星座に経緯線による境界を設けることを提唱し、案を策定。この案は1928年の第3回IAUライデン総会で可決され、星座の位置は確定されました。
星座は古代オリエントやギリシア・ローマ、中国など古くから親しまれ、研究されてきたものですので、当然このときに88個の中に入らなかった星座も数多く存在します。
-Aが語った「ジェイミソンさん」と「トレミーさん」とは、それぞれアレクサンダー・ジェイミソンとクラウディオス・プトレマイオスのことを指しています。
ジェイミソンは1782年生まれのスコットランド人作家で、『ジェミーソン星図』を手掛けたことで有名です。すでにフランスやドイツに存在していた星図のイギリス版として作られたものでしたが、中にはジェイミソン自身が考案した「ナイルの水位計座」「ふくろう座」「日時計座」が含まれていました。フクロウと日時計は上に見た通り、-Bの実例リストにも登場していましたね。
プトレマイオスは言わずと知れた古代ローマの知の巨人の一人です。彼が作製した星表をもとに、現在まで世界中で共通して知られる数多くの星座が見出されました。プトレマイオス星表を基にした「トレミーの48星座」は、そのうち47つがIAUの88星座にも採用されています。零れた唯一の星座が「アルゴ座」でして、ギリシア神話に登場する帆船を模したものだったのですが、現在は「とも座」「ほ座」「りゅうこつ座」の、3つの船の部分に分割して認識されています。-Aが『ジェイミソンさんの子たち』と述べているのに対し、『トレミーさんの子』とこちらを単数形で呼んでいるのは、トレミー48星座のなかで-Cとなる条件を満たす星座がアルゴ座ただ一つだからだと推察されます。
登場星座の元ネタ
というわけで、SCP-539-JPには88星座になれなかった星座が降ってきます。
せっかくですので作中に登場した-Bの元ネタを軽く追いかけてみましょう。
- トナカイ…18世紀フランスの天文学者ピエール・シャルル・ルモニエが考案した「となかい座」
-
フクロウ…ジェイミソンが考案(上述)
-
カニ…黄道十二星座の一角がなぜ!?と思われるかもしれませんが、これはオランダの天文学者ペトルス・プランシウスが1612年に作製した天球儀に加えられた「子蟹座」です
- 日時計…ジェイミソンが考案(上述)
- ユリ…フランスの建築家オギュスタン・ロワーエが1679年に発表した星図に描かれた「ゆり座」*3
- 餃子&ピザ…さあ、誰が考えたんでしょうね
[小ネタ]落ちてきてほしい星座
①実在したものの88星座に採用されていないものシリーズより
- ボルタ電池座(トマス・ヤング[英]考案、1807):長持ちしそう。
- ケルベルス座(ヨハネス・ヘヴェリウス[波]考案、1690):-Aの手にかかればかわいいわんこになるのでは?
- 猫座(ジェローム・ラランド[仏]考案、1799):絶対かわいい。
- フリードリヒの栄誉座(ヨハン・ボーデ[独]考案、1787):青く輝く王冠が見たいだけ。
- ヨルダン座(ペトルス・プランシウス[蘭]考案、1613):規模がでかい!だから敷地が広いのかもしれませんね。
- 印刷室座(ヨハン・ボーデ[独]考案、1801):ちゃんと使えたりして。
- ポロフィラックス(ペトルス・プランシウス[蘭]考案、1592):"天の南極の守護者"という意味。かっこええ…。
- 帝国宝珠座(ゴットフリート・キルヒ[独]考案、1688):絶対きれいですよね。
②総たいしょーオリジナル星座シリーズより
- フリーザ:ツイートでも言いましたが、青く輝くフリーザ様が見たい。最近超サイヤ人も青くなりますし。
- レックウザ:新色違い。
- 中野サンプラザ:岡山にあれば便利そう(偏見)
- 必殺技:触ると技を覚えられるスキルオーブ的なそんなん。
- リレンザ:インフルエンザがもう収容済みならこちらも。
- ことわざ:触ると諺を覚えられるスキルオーブ的なそんなん。
- アドバイザー:ヒト型もありなのかな?
- 楽市楽座:税金が減るといいですね。
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